政治・経済・社会
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定期連載 暖流
更新日:2014年6月10日
しっかり王道を進もう
 

 さわやか福祉財団は、これまで常に王道を進んできた。「新しいふれあい社会の創造」を目指してさまざまな活動を展開してきたが、財団自体の利益や一部の人の利益のために、市民全体の利益を無視するような活動をしたことは、一度もない。
 私たちは、地域の助け合いを広める活動を続けながら、この活動の基礎を築く政策の実現も働きかけてきた。大きくは介護保険制度の制定や、地域包括ケアの推進、市民後見人の拡大、NPO制度や新公益法人制度の制定、改善などである。
 それぞれの動きの過程で、自己の利益のために制度の利用者全体の利益を犠牲にしようとする特定利益集団の強力な圧力があった。施設経営者集団のエゴ、特定専門家集団のエゴ、特定の従業者集団のエゴ、封建的家族観にとらわれた政治家等による介護の社会化反対、旧制度による過保護な利益に固執する特定受益集団、そして、行政の管理支配権への固執と新しい事業への拒絶反応など。いくつもの特定利益集団が、時には露骨に政治の力を使い、時にはもっともらしく全体の利益のためという偽りの衣を装いながら声高に反対し、別案の主張をしてきた。しかし、さわやか福祉財団は、常に、何が利用者全体、市民全体に最善の利益をもたらす政策なのかを見極め、これに賛同するグループとその時々に協力してその実現を図ってきた。
 幸いに、助け合いの基礎となる諸政策の多くは、厚生労働省の老健局か社会・援護局が担当で、ここには志をもって全体の利益のために一部の利益集団の強力な圧力をはね返す頼もしい幹部職員が結構居たから、私たちは市民全体の声なき声を代弁して彼らに提言し、彼らの動きを後押しする形でいい政策を実現してきたのである。確かに市民全体、利用者全体は、実に静かで、利益主張はまったくしないのであるが、それでも、すったもんだの末に実現する政策は、おおむね市民全体の利益に添うものになる。だから市民は全体として、静かな大河の流れのような力を持っていると信じ、公正無私にその声に耳を傾け、これを生かすことに全力をつくしてきたのである。

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 私たちは、目下の急務である新地域支援事業についても、市民全体の最善の利益を実現するべく、公正無私の姿勢を貫いてこれに取り組んでいる。
 ところが、今回は、これまでと趣きを異にするエゴの動きが出てきた。地域支援事業の仕掛けを特定グループのNPO等の組織で単独に請け負い、行政から出る補助金等を独占しようという動きである。
 地方で働く人たちは善意で意気込んでいるのであるが、冷静に考えてくれれば、地方でどれだけの実績があったとしても、NPO単独で地域の全体を動かすことは、不可能である。
 地域が助け合いで地域の要支援者に対する生活支援サービスをもれなく引き受けるには、地域の全体が動き、困っている人の全部をお互いさまの精神で支える活動を展開することが必要である。助け合いは、対象を要支援者だけとか、子どもだけとか、障がい者だけとかに絞り、タテ割りで展開することはまず困難である。だから、地域の自治会、町内会、あるいはまちづくり協議会などの地縁団体が、その地域で面として働き、支援を要する方々を見守り、交流し、随時、日常的に助け合うことがベース。そこで支えきれない人たち、例えば毎日の配食を必要とする人、週何回かの病院通いなどの継続的な外出支援が必要な人を、NPOなどのテーマ型支援団体が引き受ける。そのように、地縁団体とさまざまなNPOなどのテーマ型団体がしっかりネットワークを組んで、地域の多様なニーズに対応する体制をつくらなければならない。
 そのためには、まず、地域の地縁団体のリーダーや社会福祉協議会その他の福祉団体、それぞれの分野のテーマ型NPO団体などのリーダーが幹事会(実行委員会)を形成する。そして、行政や地域包括支援センターの代表などを交えて、その地域における助け合いのあり方を協議し、「その実現のためどんな活動をつくり出し、どんなネットワークをつくるか」について合意していくプロセスが欠かせない。その協議の過程で、全体の信望を集め、リーダーと認められた人が仕掛け人(生活支援コーディネーター)となり、それぞれのグループのリーダーたちの協力を受けて、その地域におけるあるべき助け合い活動を仕掛けていく。
 これが、全体の最善の利益を実現する道であり、王道なのだ。
 新地域支援事業は、市区町村が遂行する事業だから、それが全市民にとって最善のものになるかどうかは、それぞれの地域のインストラクターの志と熱意にかかってくる。
 高い志と協調し合う柔軟性をもって、王道を進みましょう。

(『さぁ、言おう』2014年6月号)
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