政治・経済・社会
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定期連載
更新日:2007年8月21日
参院選でのメッセージ
  日本国民は、新憲法制定以来、選挙で誤った判断をしたことがない。私は、そう確信している。
  経済成長が必要な時は、自民党に政権を担わせてきた。政権運営におごりが見えると、社会党などの票を増やしてけん制したが、社会党単独政権をつくらせることは、ついぞなかった。
  社会基盤が固まり、政治が創造の時代から調整の時代に入ってくると、二大政党を実現してバランスがとれる形にしようとする。有識者がなんのかんのと論じても、国民は、トータルとしてしっかり時代に即した正しい判断をするのである。
  今回の参院選も、そうだった。
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  「強行採決をしても意味がないよ」というのが、国民のメッセージである。
  安倍総理は、小泉さん並みの実行力があることを示して、国民の心をつかみたかったのであろうが、これが全くの裏目に出た。かりに小泉さんが郵政民営化法案を強行採決したのであれば、国民の大勢はこれを認め、拍手したであろう。だから、実行力があることが人気の源なのではなく、国民が望むことを、抵抗が強くても実現してくれることが人気の源なのである。
  国民投票法にも教育基本法改正にも公務員制度改革法にも、国民の大勢は疑問を持っており、これらを無理に成立させたことに怒りを覚えた。それが、今度の選挙で大きなねじれを生じさせた理由である。
  それを、「基本的な政策は承認されている」と解するとは、どこから出て来る解釈であろうか。それらを肯定しているのであれば、与野党がほぼ拮抗(きっこう)する程度の数にし、あとは年金問題への対応をみて総選挙で断を下すことにしたであろう。要するに、国民は、明確に安倍政権が強行採決した基本的政策を否定したのである。
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  国民は、今回の選挙で「民主党よ、しっかり政策を立てなさい」というメッセージも発している。
  参議院で、与党が衆議院を通した法案を否定すると、民主党には重大な責任が発生する。
  法案は、何らかの社会的問題があり、これに対する解決策として提出されるのであるから、その解決策を否定することは、現状維持でよいという意味か、別の解決策を採れという意味か、そのどちらかである。いずれにしても、なぜ現状の方がよいか、あるいは、なぜ民主党提示の解決策の方がよいかを国民に示せなければ、その支持は得られない。少数野党であった時のように、ただ問題点を指摘しているだけでは、無責任と判断されるのである。
  小沢民主党が、参議院に民主党法案を提出するというのは、さらに積極的にその責任遂行ぶりを示そうという態度だから、おおいに歓迎される。
  それが、年金流用禁止というのも、アピール力はある。年金事務費を税金で賄うのがよいかどうかという問題、そして今後半世紀以上支持される負担と給付の基本構造は何かという問題をしっかり議論し、おおかたの国民の納得する解決策を今度こそ見つけてほしい。
  とはいえ、民主党が、国民新党との連携を深めるため、民営化した郵政を元に戻す法案に賛成するのは、国民をしらけさせる最悪の選択である。大切なのは、与党を追いつめることではなく、国民の意思を生かすことである。ここを間違うと、アッという間に凋落(ちょうらく)するであろう。
(信濃毎日新聞掲載/2007年8月20日)
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2006年9月20日 行政の過剰規制は廃止を
2006年5月24日 弱者をつくらぬ政策を
2006年2月2日 公益事業・営利事業の区別
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