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定期連載
更新日:2009年4月4日

「協働」の知恵 民間主導で

  今までとはちょっと変わった政府の会議が2つあった。
  1つは3月の第3週に麻生総理が官邸で主催した「経済危機克服のための有識者会合」である。80人余りの有識者が10グループにわかれて提言した。出席を頼まれた時は、何となくきな臭いのが嫌で、迷ったが、「霞が関の役人からは出ない民間の知恵がほしい」と言われ、断るのもシャクだから、無い知恵を絞って出席した。
  私の提言は、「この際、ニーズに応えきれていない福祉施設や教育施設を、ニーズを満たすまで造れ」というものである。保育園、子育ち支援施設、特別な学校(不登校児童など)、グループホーム、地域密着型施設など、待ち望まれている施設は多い。提言のミソは、その建設資金で、ここに高齢者が貯め込んでいる資金を投入し、それによって経済を活性化しようというのである。そのために「投資した高齢者に優先入居権、孫の入園権などを与え」、この経済危機の間の投資をうながすため「当初2年内の投資は相続税を免除」し、また、「投資金の回収を政府が保証」するという案である。
  私は、ほかの委員からどんな案が出るかと楽しみにして出席したが、うなずけたのは日野原重明先生、反貧困ネットの湯浅誠さんら個人の立場で出席された方々の提言だけで、あとは業界代表の陳情のような主張が続いた。麻生総理にもほかの閣僚にも「民間のいい知恵を汲み取ろう」というような熱気は感じられず、マスコミも総理の失言を探すだけの雰囲気で、社会保障グループについて言えば、期待外れであった。
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  もう1つは、3月24日に内閣府で開かれた円卓会議である。会議の題名は例によって長たらしく「安全・安心で持続可能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議」である。政府側は、河村官房長官、野田、舛添、二階、斉藤各大臣ら、学者は、佐々木毅氏、樋口美雄氏らであるが、むしろ主体は民間の事業者団体、消費者団体、労働組合らの代表、それにNPO、公益法人らの代表として加わった太田達男氏、星野昌子氏と私ということになる。面白いのは、民間グループの代表は、透明で開かれた過程で選ばれ、選出母体を実質的にも代表するということと、この会議では、民間の委員も政府の委員も対等とするということである。
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  第1回会合では、何をテーマに議論するかが議論され、結論は、部会を設け、そこにそれぞれ団体グループが選んだ委員が集まってテーマを決めるということになった。私は「面白い発想の会議だが、この会議自体が持続可能なものになるかどうかは、選ばれるテーマが未来に希望をもたらすものとして国民の心をつかむかどうか、そして、そのテーマについての議論が、特定グループの利益でなく、国民、市民全体の利益のためという視点で行われるかどうかにかかっている」と述べた。こちらの会議は、みんなが協働していい日本にしたいという気持ちが滲み出ていて、政府側も、それなりに受け止める姿勢を見せ、うまくいけば成果を挙げるかも知れない。ただ、政府の主催でなく、民間側の主催で、そこに政府の関係者の参加を求める形であれば、なおよかったと思う。  
(信濃毎日新聞「月曜評論」2009年3月30日掲載)
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