政治・経済・社会
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定期連載 辛口時評
更新日:2005年9月16日
対テロは国際警察で

 テロをやっつけるのに、軍隊は、ふさわしくない。
 テロリストは、領地を持たず、民衆の中に隠れている。だから、テロリストを見つけるためには、民衆の中に入り込み、辻裏の人々から丹念に情報を集めなければならない。民衆からの信頼が必要である。
 戦闘服を着、大きな銃をかついで民衆の中に入っていっても人々は背を向けるか、「私は何も知らない」と答えるだけであろう。
 行動があやしいという情報が寄せられたら、はたして彼がテロリストなのかどうか確かめなければならない。これは結構手間のかかる作業であって、関係諸機関とのネットワークでその人物に関する情報を集めるほか、根気強く追跡調査を行って日常の行動や人との接触状況を把握していく。
 こんな作業は、軍隊には不向きである。彼らにやらせると、昔の憲兵のように、いいかげんな情報で踏み込んで拷問ということになりかねない。イラクやグアンタナモ基地での米兵たちの調査活動が、そのことを示している。
 そして、間違いないとなったら、気付かれないように忍び寄ってさっと逮捕し、証拠隠滅の機会を与えない。押収した証拠を綿密に分析し、得られた新情報をもとに、背後の敵に悟られないよう態勢をととのえ、背後のグループを一網打尽にする。
 これも、軍隊にはできない。軍隊は、テロリストがひそんでいるという情報が入ると、その確度にはあまり頓着せず、いきなりミサイルをぶち込んだり、爆弾を落としたりする。
 しかし、ビンラディンは一向に爆死しないで、子どもが死んで泣き叫ぶ母親の映像が全世界に流れる。それが中立であった民衆の怒りを引き起こし、次なるテロの基盤をつくる。
 先進諸国の軍隊は、あまりそういうバカなテロ増殖行為はしないが、ブッシュさんの軍隊とイスラエルの軍隊は、懲りずにテロの火種をばらまいている。
 軍隊に、テロ対策は向かないのである。それは、警察がすべきことだ。イラクの場合も同じで、イラクの警察隊を強化し、彼らが全面的に治安維持活動に当たるべきである。
 ところが、どの国の警察も、活動範囲を国内に限定され、活動権限についても国内法令で制約されている。国際協力の仕組みも実に時代遅れで、国際間の情報交換や連携がはなはだ不十分である。
 だから、本来は警察がすべき仕事であるのに、国際テロについては無視され、すぐ軍隊の出動の方向にいってしまう。しかし、それが有効でなく、弊害が多いことをわれわれはもう十分に学んだ。
 ここは、テロ撲滅のための国際警察をつくる作業が必要である。テロリストをすべての国で拘束し、捜査し、処罰できるよう、各国が警察と司法の制度を改め、国連主導の下、全世界の警察が連携して対応したい。
 過剰な殺傷を避け、容疑者の人権も守りつつ適確にテロリストをとらえる体制を提言・推進することこそ、日本にふさわしい外交だと思うが、いかがであろうか。

(神奈川新聞掲載/2004年8月30日)
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