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提言 ビジネス(人事・組織)
更新日:2006年8月9日
「『やりたいこと』をお持ちですか?」 
  これまでの職場を振り返って、「あの職場では、こういう仕事をやり遂げたなぁ」「この職場では、こんなことを学んだなぁ」と思えるようなことが、ありますか?
 
  どの時代にもそう思えることがあると、これまでの人生どこをとっても意義のあるものだったと、自分で満足することができます。これを今後も積み重ねていくと、人生の幕を閉じる時にも「自分は、精一杯生きてきた。人生に悔いはない」という気持ちで、安らかに死を迎えることができると思うのです。
 
  私は、ませているようですが、高校、大学時代から、そういう人生を送りたいと考えていました。小学生時代が第二次世界大戦で、中学時代が敗戦の混乱期でしたから、人が戦場や空襲、そして栄養失調などでたくさん死んでいくのを、身近に体験しました。だから、人生のはかなさと、かけがえのなさとを、実感していたせいかも知れません。
 
  それで私は「生きている以上、自分のしたいことを思いっきりしたい」と考えました。
 
  大学時代に、大阪地検特捜部が汚職で十数人の府会議員を次々と逮捕していくのを見て、「これだ!」と思い、特捜部検事になろうと決めました。
 
  2年浪人をしてやっと司法試験に受かり、検事になりましたが、そう簡単に特捜部には入れません。
 
  大阪地検特捜部に入るまでの5年間、私は札幌、旭川、大津などの各地検で、特捜検事のように自分で事件の端緒を見つけて摘発することに挑戦しました。旭川地検では、参議院議員の選挙違反を検察庁だけで捜査し、北海道庁の衛生部長から旧厚生省の局長まで逮捕しました。
 
  大津地検では、3人の市長を汚職と選挙違反で逮捕しました。あの時代を振り返ると、夢と野心に燃えて全力疾走していたなと、自分の青春時代がなつかしくてなりません。
 
  自慢話になるようでためらわれますが、それ以後のどの時代も、私は、職場を変わるごとにそこでやるべきことの目標を立て、それを実現するために可能な限り努力をしました。
 
  念願かなって検事6年目に入れた大阪地検特捜部では、同部が発足以来はじめて国会議員を逮捕した事件の端緒をつかみ、捜査に着手しました。
 
  残念ながら捜査半ばで法務省刑事局に異動させられたのですが、気を取り直して、脱税事件の理論と実務を身に付けようという目標を立て、学習しました。その成果は、「租税ほ脱犯をめぐる諸問題(1)〜(5)」(法曹時報22巻、23巻)という論文にまとめました。理論的な問題点に体系的に答えを出したと自負しております。その時の勉強が、政府の税制調査会などで公益法人の税制改革について提案する時に、生きたと感じています。
 
  これに続く在米日本国大使館勤務時代は、アメリカの汚職捜査のやり方を現地で学ぶと共に、アメリカと日本の正義感の違いを調べるという目標を立てました。私は、その違いを肌身で感じるところまで学ぶことができたと思います。その感覚は、その後、司法改革に着手した際にも、検事を辞めた後いろいろな国際情勢を判断する際にも、有効に生きています。
 
  その後も、私は、職場を変わるごとに仕事の目標と自分が学ぶことの目標を立て、挑戦してきました。
 
  あなたは、そうした目標をお持ちですか?
 
  別に、大それた目標である必要はありません。「この職場では、自分はこれをやった」と自分に胸を張れることをやることが、人生の充実感をもたらしてくれると思っています。
(NIKKEI NET Biz-Plus ビジネスコラム「『やりたいこと』をお持ちですか?」―第4回(2006/08/03)
(URL → http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/hotta.cfm
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