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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2005年9月16日
認定NPO法人制度の改革に向けて―良きNPO法人発展の条件―
NPOの発展と問題点

(1)日本でNPOが急激に発展している社会的理由は、それだけの需要と供給があるからである。
 需要は、市民の経済的生活のレベルが向上するにつれ、彼らのニーズが多様化、高度化していること、しかし、政府は、ニーズの性質上あるいは財政面の制約上、これを満たすことができないことから、増大している。
 供給は、経済的成果よりも精神的充足感を求める市民が増えていることから、増大している。
 この傾向は、当分変わらないと思ってよい。
(2)日本でNPOが急激に発展している制度的理由は、公益法人の設立に対する許認可権の運用があまりに狭量かつ恣意的であったため、社会的要請に応えていなかったことにある。裏返していえば、1998年制定のNPO法が認証主義を採り、その設立を容易にしたことが、その理由である。
(3)健全なNPOの発展を阻害する主たる要因は、悪しきNPOの混入と、健全なNPOの発展を支援する措置の不足である。
 悪しきNPOには、[1]寄附の強要や恐喝、公共目的を装った商品の押し売りや詐欺的販売、補助金等の詐取など、違法行為の隠れ蓑に使われているNPO、[2]脱税のため、営利事業の隠れ蓑として使われているNPO、[3]会計帳簿の記帳すらしないといった、社会的責任を果たさない怠惰なNPOがある。いずれもNPOに対する社会的信用を失墜させる。
 健全なNPOの発展のネックとなっている最悪の制度は、認定NPO法人制度である。要件が厳格に失し、制度として機能していない。

良きNPOを発展させ、悪しきNPOを排除する仕組み

(1)まず、情報開示と告発である。
 寄付者、顧客、ボランティア等の立場で特定のNPOを支援する、あるいは、支援しないと決めるに当たって必要なのは、当該NPOに関する情報である。定款と役員名簿、事業報告書と決算書があればおおよその見当がつくので、それぐらいはホームページで公開されることが望ましい。そういう「広場」をつくればよい。その他必要な事項も、個人情報以外は、要求に応じてメールで開示する仕組みにしたい。法律上の回答義務を課するのは行き過ぎであろうが、回答する慣習を醸成し、回答しない場合は要求者が回答を得られなかったことを「広場」の関連情報として公開するのがよいであろう。
 良き活動を行っているNPOは、その内容を「広場」で積極的に広報したい。比較しやすいように、項目や書き方をある程度整備し、索引しやすいように工夫してほしい。
 悪しき活動を行っているNPOについては、市民の告発の風習も醸成したい。匿名でよい。当該NPOに弁明の機会が与えられなければならない。
 組織的犯罪行為については、当局への告発が必要である。
行政処分の前に、監督機関による聴問を行うことの有効性も証明されている。
(2)第三者による組織評価及び事業評価も必要である。寄附者等が、開示された情報によって自ら評価をするのは大変だからである。
 これを法律上の制度とする必要はなく、評価事業を行うNPOまたは公益法人が、公開された情報及び任意の調査によって得られた情報によって評価をすることから始めるのがよいと思う。公開または回答がないという事実も重要な評価の対象事実となる。
 評価機関の運営費は、寄附のほか、全NPOについての基礎的事項を列記した書物の販売費、個別評価依頼者からの委託費、特別調査依頼者からの委託費などにより賄うのがよいであろう。

良きNPO発展のための制度改正

(1)認定特定非営利活動法人の認定要件を大幅に拡大すべきである。
 NPOは、その設立に際し、その行う主たる事業が、私益を得るためのものでもなく、共益を目的とするものでもなく、公益を目的とする17類型のいずれかに該当する活動であることは認証を受けている。
 ただ、17類型の活動であっても、[1]それは不特定多数の市民にとって真に必要な活動であるのかということと、[2]その活動が実は営利事業として行えるのではないかということは、事業計画の文言だけから判断するのが難しい場合もある。その2つの判断を合わせて行うのが、市民の寄附者である。彼らは、上記2つの問いに積極の答が出ないようなNPO活動に寄附をするはずがない。そして、市民が身銭を切って寄附するような活動は、疑いなく公益性が高い、国として支援すべき活動であろう。となれば、寄附によって実施が可能となっているような事業を行うNPOは、すべて認定NPO法人にすべきであろう。その認定は、事業費のうち5パーセント以上が寄附金によるものというように、単純な数式によって行われるべきである。補助金、助成金も、寄附に準じた扱いをすべき性質のものであろう。
(2)その他にも改正すべき事項はあるが、大きな問題は、現在進行中の公益法人改革との関係である。日本では、沿革に由来する理由で公益法人とNPOが別のものと認識されているが、日本のNPO(特定非営利活動法人)は実質においても法的性質においても公益法人であるから、公益法人改革が必ずNPO法人のあり方に影響してくる。したがって、公益法人改革がNPOに置きかえても好ましいものとなるようにすることが肝要である。

※堀田力・山田二郎・太田達男編『公益法人改革 これでよいのか政府の構想』

(ヌーベル・エポック掲載/2004年12月20日)
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