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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2013年10月25日
固い握手
 被災地である南三陸町の戸倉地区でめざましい復興支援活動をしている人がいる。佐藤由和さん、64歳。
 ご自身、津波で家を流され、仮設住まいである。復興応援地域通貨を南三陸町に働きかけているさわやか福祉財団の鶴山芳子さんが、「由和さんは仮設の人たちにもすごく信用があって、あっという間に300人近い被災者が、地域通貨の会員になってくれました」と言う。
 「あの人は本気で私たちの暮らしを考えてやってくれてるからねぇ」というのが地元被災者たちの評価。
 ところが、地域通貨の試行を始めようという時になって、「さわやか福祉財団はやくざと組んで地域通貨をやるんですか」という地元の声が聞こえてきた。
 驚いて調べると、平成23年2月時点で、東北の暴力団幹部の一人に由和さんの名がある。さらに調べると、由和さんはその団体の傘下に佐和組を結成、28人の組員を擁し、気仙沼市なども縄張りにしていたことがわかった。しかし、彼は、大震災で上納金も納められなくなり、配下組員を正業に就かせるため、上部団体の了解を得て円満に組を解散、以後は無償のボランティアとして戸倉地区の復興のため奔走している。
 「お金もうけじゃなくて地元の復興に役立つ。復興応援地域通貨の話を聞いて『これだ』と思い、一生懸命取り組んできたのですがね。でも、私の経歴をいつ話そうかと悩んでいたのです。聞かれてないのに言うのも変だし」。由和さんは、男っぽい顔に困惑の表情を見せる。
 「被災地の人たちは地域通貨にすごく乗り気なんですよ。みんなの気持ちがここまで来ているのだから誰かを表に立てて続けるわけにはいきませんか」
 私は断言した。
 「表も裏もないですよ。もう組は解散したのだから、あなたが前面に出て下さい。私が支えます」
 握手をした由和さんの手は力強かった。
(京都新聞「暖流」2013.10.20掲載)
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