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提言 生き方・その他

更新日:2012年1月25日

人生最後の仕上げの時期
 自宅で、ゆっくり過ごせるのが、いちばんいい。
 できれば、愛する家族が、いっしょにいるのがいい。
 世の中、思うようにならないこともいっぱいあるが、それでも、自分の心をやすらかにして、生きていることを楽しみたい。
 たくさんの人に、感謝しながら。
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 人生最後の仕上げの時期、病院や施設で、たくさんの決まり事や禁止命令に縛られて暮らすのは、ご勘弁願いたい。
 だいたい70とか80とかになれば、身体のあちこちに不具合が出てくるのは、当たり前だと思う。人を含めて動物は、こどもを生み育てる時が過ぎれば、あとは生命に保証はないのである。だから、よけいに自分をいつくしみ、大切にしながら、自分らしい生き方を自分でつくり出していきたい。
 定年が、60代になっているのは、それ以後は生命を含めて自己責任であって、社会はもう責任を取りませんよ、ということである。
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 だから、その頃を境に、医療の考え方も、がらりと変えなければならないだろう。
 動物としての生命が保証されている間は、身体のどこかが不具合になれば、そこだけを治せばよい。あとは身体が持つ自然の力が、もとに戻してくれる。
 ところが、生命の保証期間が過ぎると、次第に、もとに戻らなくなる。どこかの不具合を治しても、全体としてのバランスがもとに戻らず、どこかしこ、調子が出ないところが出てくる。
 だから、どこか悪いところがわかっても、そこを治すことだけを考えてもらったのでは、うまくいかないことが多くなってくる。
 身体の全体を観るという作業が必要になるのである。
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 高齢者がこんなに増える前は、そんなことはほとんど考慮しなくてよかったんだと思う。
だから、医学には、そういう視点もそのための方法も、開発されていないのだろう。
 だけど、これはなかなかやっかいな視点だと思う。当面の不具合な部分だけでなく、ほかのいろいろな部分の衰え具合も観なければならないだろうし、ある部分の治療がほかの部分に及ぼす悪影響という、やっかいなことも、ある程度科学的に予測しなければならないだろう。考えるだけでも、それはすごく個別的なことであろうし、難しい研究だと思う。
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 しかし、これだけ高齢社会になったのだから、そういう医学を進めてほしいと願う。
 そして、そういう診断のできる医者が、総合医(単なる家庭医でなく)として、地域にたくさんいてほしいと思う。
 人生最後の仕上げの時期を幸せなものにするために。

(「Medical ASAHI 2012 January」−新春エッセー掲載)  

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