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提言 生き方・その他

更新日:2018年2月23日

目覚めた公務員

 「私も地元の自治会の役員をやってみて、地域の助け合いの心というか、互助の本質というか、それがハートでわかりました。私なりに自分は優秀な公務員だと信じて今までやってきましたが、それは人の生き方の基本とはまったく違うということに気付いて、ガクゼンとしました。これまで非営利の活動を、非効率で素人的な活動だと何となく見下していたことを、とても悔やんでいます」
 ある県庁の幹部である50代前半の男性がしみじみと語った言葉である。
 見守りやらちょっとした日常の助け合いやら、かなり積極的な互助・共生の活動をやっている自治会に誘い込まれ、真面目な性格から真剣に取り組むうちに目覚めたのである。

 彼が気付いた公務員の職務と地域の助け合い活動との違いを整理すると、次のようになる。
 @公務は(実は企業活動も同じであるが)、効率(生産性)を最大の価値とするが、助け合いは、心が温まる人間関係ができればそれでよい。
 A公務は、より効率の良い活動を行うためにPDCAサイクルを要求されるが、助け合いは心(精神的満足)を主たる目的とする活動だから、基本的に数字の目標や評価にはなじまない。
 B公務は、より効率の良い活動を行うためにピラミッド型組織で業務を遂行するが、助け合いはそれぞれ個人の志で活動するから、上命下服、指揮監督にはなじみにくく、活動を仕切ってはならない。やらされ感は助け合いの敵である。
 体験から来るそれらの発見に基づいて、彼は次のような提言をする。
 @共生の時代を迎えた日本の公務員は、地域住民の心と生き方を理解するために(それは本人とその家族の幸せな生き方のためでもある)、在職中から地域の何らかの社会貢献活動に参加し、共生の生き方を体験すべきである。
 Aそれがかなわずとも、寄付によってそういう活動を支援すべきである。
 それらは私もかねて主張しているところであるが、自ら助け合いを体験していないと住民に互助の活動を勧める言葉に説得力が生まれない。共生社会を進める公益法人など諸団体に勤める有給の役職員も、同じである。

(「厚生福祉」2018.2.9掲載)

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