政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2011年9月15日

政治は復興に専念せよ
 先の見えない毎日がどれほど辛いものか、政治家は被災者に思いを馳せたことがあるのだろうか。
 どんなに遅くても今年の5月には国が示さねばならなかった復興への基本的な支援策が、まだ姿を見せていない。大震災発生から6か月もの間、これだけの被災者を暗闇に放置して、政局に気もそぞろな方々の気心が知れない。
 先の見えない不安から、自殺する被災者が出始めている。阪神淡路の時より、かなり早いように感じる。
 無理もない。阪神淡路の時は、もとの場所で立ち上がるという復興の仕上がりの姿が決まっていた。今度は、違う。津波で流された場所には住みたくないという人たちが多い。しかし、それではどこに戻るのか、そこが見えない。いわば、阪神淡路の発生直後の時点にすら至っていないのである。6か月も経つというのに。
 だから、被災者が集って復興を話し合っていると、しばしば鋭い対立が起きる。
 「私たちは国道6号よりは浜寄りだけど、半壊の家がまとまって残ってるし、できればそこへ帰りたいんだけど」
 「JRの駅は、今の位置で復興してもらえないだろうか」
 「みんな勝手なこと言ってるけど、それはあんたらのエゴだろ?津波が来たところに住んで、子や孫を同じ目に合わせていいのか」
 そういう議論が続き、つかみ合わんばかりの激論になる。
 その市や町の首長や幹部に被災者の声を伝えると、
 「わかってます。しかし、国は居住地域を開発するのにどれだけ財政支援をしてくれるのか、そこがまったく見えない。JRさんも、どのように常磐線を復旧するのか、まったく見えない。それでは計画の立てようがありません」
 そういう中で、被災者を含む住民たちが自発的に何度も話し合って、町の復興の基本図を描くところも出てきている。私たち復興応援団も、そういう話し合いを後押ししている。元気を出して前進してほしいからである。
 しかし、首長さんらには慎重な人が多い。
 「いくら図面をつくっても、そうなる保証はありません」
 それはその通りだが、それが住民の合意であって、国の東日本大震災復興構想会議が示した例にも適合する合理的なものならば、行政は、特別な事情(例えば、隣町の復興図と符合せず、JRの線が通せないなど)がない限り、その図に基づく復興を、財政面でも、道路、森林その他の行政措置の面でも全面的に支援すべきである。
 与野党の政治家たちが、党利党略、党内の権限争いなどを超え、大震災の翌日から全力を挙げて取り組み、いくら遅くても5月までに国として決めるべきであったのはそのことである。
 第一に、住民の意向に沿い、自治体が定めた復興計画に必要な経費は、国が負担すること。
 第二に、その復興の障害となる国の規制は、自治体の権限でその特例を設けることが可能なこと。
 この二点さえ決めておけば、住民と自治体は時間を空費することなく復興に取り組み、いまごろはどの被災者も、希望を持って復興に励んでいたであろう。
 財源の手当ては、そのあとで議論すればよい。出すしかないお金は、出すと決めるしかない。
 平時を想定する行政規制は、復興のためには、早々とはずす義務があるだろう。
 難しいのは、住居地を移転する際の所有権等の権利関係である。被災地にかかわる町づくりについては、例えば参加者の過半数による権利変動を認めるなど、きわめて大胆な例外措置を早く決めなければならない。難問であるが、その解決策の遅れは、日々刻々、被災者の幸せになる権利を害していると自覚してほしい。

(電気新聞「ウェーブ」2011年9月7日掲載)

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