政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2015年7月30日

補助金 判断できるのは現場

 ボランティア活動を行政はどう支援するのか。

 この古い課題が、今あらためて地方自治体に突き付けられている。要支援者等に対する生活支援を市区町村の責任で、市民の助け合い活動によって行う新地域支援制度が実施されたからである。

■問題は支払い方法

 もう一つの仕組みは、助け合い活動をする団体に対する補助金である。助け合い活動だから、介護保険制度による給付事業を行う事業者と違って、サービス行為に対する報酬は支払われない。個々のサービスは、ボランティア活動として行われる。ただ、組織の活動を支えるために、組織の立ち上げや、運営のための事務費などの運営費が補助金として支払われる。

 補助金をどのように支払うかは、各自治体の裁量である。

 これまでの支払い方法の例をみると、生活圏域ごとにつくられる地域協議会などに年間一定額(数十万円から200万円程度)をまとめて払う、市民の居場所の立ち上げ費用を上限の範囲内で何十万円か払い、あとの運営費は居場所に来る市民の数に応じ、一日30人以上なら月7万円などと基準を定めて支払う−など多様である。

 問題は、この支払い方法である。ほとんどの市区町村は、これからそれを決めることになるので、この際しっかり基本から検討してほしいと願っている。

 いちばん望ましいのは、一銭も支払わないことである。助け合いは、市民相互の互助、共助の活動として自主的、自発的に行われるものだから、その運営に要する経費も市民で分担することが、自主性を確保するためにもっとも適している。全国の仲間たちを見ても、しっかり助け合い活動を展開している団体は、その運営費用も地域の幅広い層の個人や法人から継続的に寄付を受けて賄っている。

 しかし、日本はまだ米欧先進諸国(現代的共助活動の先進諸国)ほどには寄付文化が根を下ろしていないから、ほとんどのボランティア・助け合い組織の運営者は、運営費の調達に四苦八苦している。難しいのはここのところで、彼らが困っているからといってその分補助金を出せばそれで助け合いが広がるかというと、そうではない。

 補助金を出したために、活動が次第に行政依存型になっていき、運営のやり方が官僚的、つまり形式的、画一的、先例踏襲型、平目型(上向き志向)になり、活動者の志が失われて活動のインセンティブ(喜びや充実感)が消え失せ、活動自体がついえ去った事例は、世界にも日本にも山ほどある。

■成否を決める鍵

 補助金の出し過ぎは絶対によくない。たとえ運営者が頼み込んできても、である。
 しかし、必要な時に必要なものを出さないと、せっかく市民がやる気になっていても、その活動が生まれない。

 その必要性と過剰性を誰がどう判断するのか。ことの成否を決める鍵はここにある。

 それは、行政には分からない。分かるのは、助け合いの現場である。現場で「何とかこの活動を広めなければ」とやきもきしながら身を粉にしていると、肌身で分かるのである。

 そうなると、新しい仕組みの中で適正に判断できる機関は、第2層(生活圏域)の協議体ということになる。おそらく、それ以外にはない。

 協議体には、地縁組織やNPO、社協、生協、その他地域の助け合いを行う各種の団体をリードする人物が参加し、コーディネーターと組んで市民の求める助け合い活動を掘り起こしていくことになる。

 どの組織にどれだけのお金を何の経費として出せばよいか、そしてどこで出すのを止め自助努力に委ねて大丈夫かを知るのが、彼らの任務なのである。

 となれば、市区町村は総額を示してその配分を彼らの判断に委ねるのが、公の資金をもっとも有効に活用する方策である。

 ゆめ、補助金で市民の助け合い活動をコントロールしようなどとは考えないことである。

(信濃毎日新聞「多思彩々」2015.7.26掲載)
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