政治・経済・社会
(財)さわやか福祉財団ホームページへ
 
提言 政治・経済・社会

更新日:2017年6月23日

病院と地域の絆

 江戸時代の古い街並みが残る埼玉県川越市の郊外に霞ヶ関南病院がある。所用があって病院を運営する斉藤正身医師を訪ねたが、驚きの連続であった。

 院内に入ると、受付の先に街がある。細長い建物の真ん中に広い通り(ガレリア)があって、上はアーケードで太陽の光が注ぎ、通りの片側に商店が並ぶ。コンビニ、花屋、レストラン、カフェ。パリの店のように、通路にもテーブルや椅子を広げている。

 もう一方の側には、地域の人による書や絵画などが展示されたギャラリーがある。地元の人たちも自由に出入りしており、いろいろな人が好き好きな格好で飲食しながら話している姿は、とても病院の中とは思えない。

 広い研修室では、ボランティアや民生委員、医療・介護の専門職、行政など、50名ほどが集まって勉強会をしておられた。地方創生のプログラムに乗って、どのように川越の地域を活性化するかの勉強会である。

 「地域が元気で支え合わないと、病院だけで高齢者や障がい者などを支えることはできません」。斉藤さんの方針は、明白であった。

 次いで見せてもらったのは、古い病院を居心地よく改修した霞ヶ関中央クリニック。

 ここの各室の楽しげな様子にもその都度驚かされたが、決め手は誰もが使えるフリースペースであった。地域包括支援センターの隣にある。私が見学した時は、地域の認知症の方や家族を支えるボランティア、認知症カフェの運営者と、医師やケアする専門家などの情報交換会が開かれていたが、主任ケアマネの猪鼻紗都子さんによれば、専門家たちもこの会から学ぶことが多いそうな。すごいのは、その会も含めて、そのスペースは、地域の誰もが使えることである。部屋にカレンダーが下がっていて、そこに使いたい人が、団体名と集会の趣旨を書き込めば、それで使ってよいのだという。地域との絆と信頼の強さに圧倒された。

(京都新聞「暖流」2017.6.13掲載)
バックナンバー   一覧へ
  このページの先頭へ
堀田ドットネット サイトマップ トップページへ