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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2005年9月16日
介護保険制度改革とふれあいボランティア事業
尊厳保持に欠かせないふれあいボランティア

 介護保険5年目の見直しの結果行われる今回の介護保険制度改革は、第1条に、尊厳の保持を目的に掲げたこと、そして、地域密着型のサービス体系を整え、できる限り住み慣れた場所で、自分らしい生き方ができるよう地域全体で支える仕組みづくりを目指していることなど、全体としては時代の流れに沿った前進を図るものと評価できる。
 しかしながら、介護保険制度は、国がその責務を果たすためにつくった仕組みであって、改革法案は当然のことながらプロが行う身体介護を中心とする骨格を示すに止まっている。個々の高齢者の尊厳を支えるには、家族や近隣の人々、ボランティアやNPO活動者などが、温かい愛情をもって、個々に異なる高齢者の思いを満たす支援活動を展開することが不可欠であるが、そのようなインフォーマルな活動は国(行政)がつくる制度や仕組みにはなじみ難いところから、今回の改革でも、形として示されていない。
 そのようなインフォーマルな活動(ふれあいボランティア活動)を各地域で広め、介護保険制度のサービス提供者などとのネットワークを結ぶことを提唱し、尊厳保持のための活動が総合的に行われる社会を実現していく責任は、我々にある。

見直される認定区分と地域包括支援センターの創設

 そういう視点から、介護保険制度の改革に関して現段階で我々がすべき運動を、二つ提言する。
 一つは、新たに設けられる介護予防の仕組みに、当初からふれあいボランティア事業も参画していくことである。
 厚生労働省が示す新「予防給付」のイメージは第1図のとおりで、現行の要支援のすべてと、要介護1のかなりの部分が、新しく介護予防の対象となり、従来の介護給付に代えて、予防給付が行われることとなる。要介護1に残るのは、認知症の人など、介護予防になじまない人たちである。予防給付の中核は、リハビリ(筋力向上)、栄養改善及び口腔機能向上の3つで、現行の家事援助などは、当事者の自助の意欲を失わせないという観点から、厳しく見直されることとなる。
 厚生労働省は、介護予防活動はもっと広い見地で行うべきことを強調するが、介護保険制度の枠内で行われるサービスは、身体機能の維持という視点に絞り込まれた、限定的なものとなると見込まれる。だから、予防給付のプランは、ケアマネジャーでなく、保健師が立てることとなる。一方、予防給付を受けられない認定外の人々について、厚生労働省は、「地域支援事業(仮称)」を行うこととしている。そのままでは介護認定の対象になりそうな高齢者に対し、市区町村が介護予防のために行う支援事業のことであるが、その内容はこれから決めることになっている。
 我々は、予防給付の内容がどのようなものになるか、これまで給付されてきた家事援助がどう制限されていくか、また、市区町村の地域支援事業がどういうものになるかを、地域でしっかりフォローしながら、それらの改革を前提にして組まれる地域福祉計画の立案に、これまで以上に積極的に参画し、そこに在宅医療・看護や、ふれあいボランティア活動、さらには、高齢者・障害者の就労・生きがいなどの活動も組み入れていくよう、強力に働きかける必要がある。介護保険制度が、介護や身体的な予防措置を講じるだけのものであっては、尊厳の確保は果たせないからである。  
 厚生労働省は強力に介護保険制度改革のキャンペーンを行いつつあるが、我々もそれに負けずに、介護保険のサービスと両輪をなすふれあいボランティア活動の不可欠性を訴えていきたい。
 二つめの提言は、新制度で市区町村に設けられる「地域包括支援センター」に、ボランティアや在宅医療を行う医師・看護師も常時参加し、文字どおり、地域包括ケアをリードするセンターとなるよう、働きかけ、参画していくことである。
 第2図は、厚生労働省によるセンターのイメージ図であるが、この構想が狭きに失することは明らかであろう。そのことを今から訴え、将来センターを、地域を包括したネットワークの中核になるよう構築していきたい。

(『さぁ、言おう』2005年4月号)
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