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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2011年12月9日

これから、第2の山へ

 被災地の復興は、おおむね今年で、第1の山を越える。
 第1の山は、どこに住居地域を造るか、海際の旧住居地は緑地帯にするか産業(漁業等)地域にするか、JRと県道をどこに通すかなどの基本計画を確定することである。
 早い市町村、たとえば、大船渡市などは、4月から計画立案の詳しい工程表をつくり、住民の意見を広く聞いて、作業を進めてきた。
 山元町、石巻市、釜石市なども、11月には、事実上基本計画はほぼ固まり、あとは、地方議会を通す手続きを残す状態となる。
 私たちは、ふれあい、いきがいの仕組みをしっかり組み込んだ地域包括ケアの町への復興を応援している。復興の応援だから、当然のことながら、各自治体の復興の進展段階に対応して、展開しなければならない。
 たとえば、8月に行った山元町被災者のバスツアーでは、JR線を元通りに復旧してもらうか、より山側に移して、住居地を津波から守る一つの役割も果たしてもらうかが、参加した被災者の間で大きな議論になった。それによって、どこに住むか、どんな町にするかが大きく変わってくるからである。
 私たちは、被災者の本音の意見を副町長ら町の幹部にお伝えすると共に、それぞれの論点について、重ねて住民の意見をしっかり聴いてくれるよう要望した。
 町は9月、参加自由の説明会を9回開いてくれて、基本計画を事実上確定した。JRも県道も山側に移し、高台に分散して住居地域を造ることになった。
 したがって、11月に行った山元町の2回目のバスツアーでは、もちろんJRを元の位置に復旧してほしい人たちもいたが、その議論はせず、新しく示された居住地域を、どのような町にするかについて希望を語ってもらった。それは、基本計画が策定されたら始まる、第2の山場の議論である。これについては、自治体はまだ白紙で、これから住民の意見を聞いて決めることになる。だから、今、私たちが、第2の山についてのインフォーマルな住民復興協議を後押しする段階に進んだのである。
 第2の山は、被災者がどの住居地域のどこに移り住むか、住居は戸建てか集合住宅か、また、その地域にどんなサービスをそろえるかという具体的な計画の策定である。いよいよ、地域包括ケアの町をどう造るか、ふれあい、助け合いの拠点をどうするかという、私たちの本命の議題に直接取り組む段階を迎えたのである。
 復興作業がもっとも進んでいる自治体の一つ、大船渡市については、10月のバスツアーでこの第2の山についての被災者の協議を後押しし、そこで出た意見を戸田市長に伝えた。
 戸田市長は答えた。
「これからいよいよ具体的な計画の策定に入ります。具体的な移転地や町の姿などを考えて、住民の意見は、変わってくることも十分考えられます。私たちは、改めて住民の意見を徹底的に聞こうと思います。250回くらい住民との会を開かなければいけないかと思います。職員には、頑張ってもらわなければなりません」
 同席していた佐藤高廣災害復興局長らが、唇をかんでしっかりうなずいた。
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 第2の山に入ると、暮らし方がテーマとなる。それには、女性の意見が決定的に重要となる。それは、自治体が行う住民懇談会などでは出難い。東北の女性は、公の場では男性(夫)を立てる傾向がある。
 だから、仮設などでのふれあいの場やバスツアーなどで出る女性の声は大切である。住民すべての層の本音をしっかり拾うのが、インフォーマルな住民協議会の役割である。
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 南三陸町のように、町の復興作業が第1の山にとどまっていて、どこを住居地域にするかについて住民の意見が聞けていないモデル地域については、第1の山を越えるよう後押ししなければならない。
 モデル地域によっては、自治体が第1の山を越えようとしているのに、私たちが、住民、被災者の本音を引き出し、まとめる作業ができていない地域もある。
 その作業がないと、ハードしか考えない建築や土木の専門家が計画を固めていき、出てきた計画に対して地域包括ケアやふれあい、いきがいの視点から異議を述べ、修正を提言しても「もう遅い。その段階は過ぎた」として、受け付けてもらえないおそれがある。
 仮設についてせっかく東大グループが出したすばらしい提言ケアタウン構想は、ややタイミングが遅れたためあまり採用されなかった。そういう残念な思いを、町の復興という本番で味わうことはしたくない。
 非常時が続く。歯を食いしばって頑張りたい。最後まで安心して暮らしたいという被災者たちの基本的なニーズを実現するために。

(『さぁ、言おう』2011年12月号)

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