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定期連載 暖流

更新日:2014年3月19日

葬儀まで
 「町内の葬儀につき3日間」という休暇届がちょくちょく出て来る。甲府で勤務していた頃である。
 ずる休みではない。山梨県では、誰かが亡くなると、その町内の方々が、喪主の意向を受けて葬儀から告別式まで一切を取り仕切る。遺族はただ並んであいさつしていればよい。
 地元の仲間に聞くと、「そのしきたりは少し薄れてきてるけど、まだ普通にやっていますよ」という。
 最後までしっかり町内の支え合いで面倒をみてもらえるのだから、平素の絆もけっこう濃い。私の妻も、毎朝愛宕山に登ってラジオ体操をするご近所の会に加えてもらっていたが、甲府を離れて30年近くなる今も、その頃の方々とおつきあいをさせて貰っている。
 甲府の絆を思い出したのは、昨今、要支援者に対する生活支援を市区町村に移管するのにともない、その受け皿として、地域で困っている人々を助ける仕組みを広げる必要に迫られたからである。
 地域の支援には、家事や食事、外出などを支援するNPOの活動も重要であるが、安否の確認や声掛け、ゴミ出し、電球の取り換え、花の水やりなど、日常のちょっとした助け合いをご近所で行う地縁関係の支援も、同じように重要である。この両者がうまく組み合ってはじめて、地域で安心して暮らせるのだといえよう。
 そう思って大都市部の町内会などを見ると、回覧板がまわるだけのところが少なくないが、大都市部でも団地などで自治会加入率100%、助け合いがごく普通に行われているところがある。
 調べてみると、団地で亡くなる人が出た場合、自治会で全部面倒をみるのだという。たとえ遺族がいなくても大丈夫という。
 単身あるいは高齢夫婦だけの世帯が増えている今日、これは安心できる助け合いである。その魅力で自治会に入り、あとは流れに乗って助けたり助けられたりしていれば、生きているうちから心温かい毎日を送れるというものである。

(京都新聞「暖流」2014.2.23掲載)

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2014年 5月16日 義務感と満足感
2014年 4月 3日 「どうも」に「がばちょ」
2014年 3月19日 葬儀まで
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