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定期連載 辛口時評
更新日:2005年11月8日
かじ取れる後継者は

 素人談義で申し訳ないが、来年秋、誰が小泉総理の後継者になるかを占ってみよう。
 私は、福田康夫さんが断然有利になったと思う。小泉総理のアキレスけんは外交問題であるが、新内閣は、これを打破できないであろう。一方、中国のプレゼンスはますます強まるから、関係改善を望む国民や経済界の声は、さらに高まるに違いない。
 福田さんは、誰の拘束も受けず、この声に応えることができる。政権末期になると、自由な立場の人は、強い。
 大逆転があるとすれば、谷垣財務相であろうか。
 常識的にいえば、谷垣さんは決定的に不利である。消費税増税をすでに公言しているし、早々にその下準備を進める立場にあるからである。
 しかしながら、かなりの国民は、消費税を増税せざるをえない時を迎えていることは、うすうす承知しつつある。これからも相当な勢いで高齢化が進むから、ある程度の負担は致し方なかろうというあきらめである。ただ負担を強いるなら、無駄遣いを徹底的に省くことと、どのように使うか、そして、負担の限度はどこまでかを明示し、しっかりそれを守る保証をしてほしいと思っている。
 これを谷垣さんができるかである。無駄遣いの排除は、小泉新内閣が、全力で残りの改革に取り組むことによってその筋道を国民に示すことになるが、年金や医療、介護などの社会保障の負担と給付について、谷垣さんが、総理総裁候補として青写真を示すことができるか。そして、その青写真は、内容においても考え方についても、大方の国民の納得を得ることができるか。
 社会保障の仕組みだけではなく、移民政策(優秀なアジア系外国人の国籍取得推進)や雇用政策(高齢者や障害者の雇用の確保)などを総合した対策を打ち出して、国民の心を魅了するような夢のある着地点を描いてほしい。
 それを示すことができれば、谷垣さんは、いや、それが実現できると期待できる実力者なら誰であっても、小泉総理の後継者になれるであろう。
 今回の内閣改造で、その実力を国民の前に示す機会を与えられたのが、郵政民営化の仕上げや地方分権(三位一体)、公務員改革などにナタを振るわざるをえない竹中総務相、政府系金融機関の統廃合を進める与謝野金融・経済財政担当相、医療改革などに直面する川崎厚生労働相などである。
 また、国民の関心がきわめて高い外交、防衛及び教育をそれぞれ所管する麻生、額賀、小坂の各大臣は、大きな得点を得るのは難しいが、感覚が少しずれれば一挙に不評を買うという難しい立場に置かれたといえよう。
 これは、本命とされる安倍官房長官についても同じである。
 日本が引き続き難局にあることは、ほとんどの国民が承知している。
 難局にどう向き合い、どこに向かうか。少子高齢化問題がひとまず落ち着く二〇三〇年ころまでを見通してかじを取れる人は誰か。あなたのお見立ては、誰ですか?

(神奈川新聞「辛口時評」2005年11月7日掲載)
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