政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会

更新日:2011年10月29日

話を聞く市長
 「私たちがどこに移ればいいのか、それを早く決めてほしいの。何年先でもいいから時期も決めてくれれば、私たちは我慢できる。
 今のままでは、いくら頑張ろうと思っても、不安で夜はよく眠れないし、力がだんだん抜けているのがわかるから、こわい」
 石巻市雄勝地区の60代の女性被災者が、しみじみと語ってくれた。仮設の仲間たちと一緒の時は、明るくみんなをリードしていた方である。
 被災した方々をバスツアーにお招きし、温泉で心と身体をいやしながら、これから目指す町の復興の姿を話し合う。10月15、16日には、大船渡市の被災者の方々を田沢湖高原温泉にお招きしたが、そこで市長さん(戸田公明さん)をほめる被災者たちに出会った。
 「うちの市長(町長)は仮設に顔を見せたことがない」。どこでも聞かれるその不満の言葉には、大震災後半年以上になるのにまだ復興計画の基本さえ立たないことへのいらだちがあふれ出ている。
 ところが大船渡市の末崎地区の方々は、違った。高台にある「ケンちゃん部落」と呼ばれる林を開拓して、そこに市営住宅を建ててもらい、集落ごと移り住むのがイチオシの復興案だそうな。
 「一戸建じゃなくて、高層住宅でいいよ。私ら老夫婦だけで住むんだから」
 「でも、1階には、お店が入ってほしいね」
 「診療所やヘルパーさんたちも来てほしい」
 「郵便局もいるよ。いまの仮設で不便してるものね」
 「年金もらわなきゃいけないからね」
 「ア、ハ、ハ」と一同笑う。
 「2階には気楽に集まるところが要るね」
 「そこで踊りの練習やる気だろ?」(笑)
 「保育所も2階だね」
 「誰が子どもつくるの」
 「娘に決まってるでしょ」
 話の中心になっている女性が私に解説してくれた。
 「私たち言いたいこと言ってるからね。元気だよ。市長さんには3回も言ったよ」
 別の女性の解説。
 「あの市長は清水建設出身だからね。話は早いよ」

(京都新聞「暖流」2011年10月23日掲載)

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