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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2009年6月10日

謝礼金とふれあい活動

 私たちの活動の理念は、一貫して、「新しいふれあい社会の創造」である。去る2月のインストラクター現任研修会でもそのことを確認した(本誌4月号特集「ふれあい・助け合い活動の展開」参照)。3月のインストラクター会議では、当財団のアドバイザーである米山孝平さんから、「当財団の原点は、ふれあい、助け合いなのだから、謝礼金を受け取る活動の場合であっても、その額は最低賃金以下に止めるのがふさわしい」という強い発言があった。これは、このところ最低賃金を超える謝礼金の標準額を設定する団体が目立つようになってきている状況を憂慮しての発言である。
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  その研修会の総括として、私は、要旨、次のように述べた。
「謝礼金は、ボランティア活動に対する謝意を表すためのお金であって、労働に対する報酬ではない。もともと気持ちを表すためのお金だから額が決まっているわけではなく、最低賃金を超える額でも謝礼金ということはあり得る。しかし、労働基準監督官から、最低賃金を超えるものは労働の報酬と認めると言われたとき、反証を挙げるのが難しい。そういう事態を考えて最低賃金以下の基準にするようお勧めしてきたので、その趣旨を理解してほしい。ただ、これを超える標準額でやっているところがどうすればよいのかは、検討課題とする」
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  その宿題について、米山さんを含め、当財団の関係者で何回か勉強会を開き、4月のブロックリーダー会議でもはかって、まとめた結論は、次のとおりである。
(一)ふれあい・助け合いの活動は、あくまでボランティア活動として行うものであるから、サービスの提供自体は、無償である。これに対し、サービスを受けた人の謝礼の気持ちを表すため、謝礼金を渡す仕組みをつくることは、活動をスムーズに広げるために有効であるが、その標準額は、労働の報酬と誤解されないため、最低賃金以下にするのが望ましい。
(二)ふれあい・助け合いの活動は、お互いさまの精神で行うのであるから、サービスの提供者と利用者を分けず、会員がお互いに必要なサービスを提供し合うという仕組みにすることが肝要である。また、運用上、会員相互の親睦を深める工夫が望まれる。
(三)最低賃金以下では人が集まらないという声があるが、それは、介護保険のサービスを補足するサービスといったとらえ方、あるいは、女性のための短時間就労の機会提供といった考え方などなどに基づき、サービスの提供者と利用者を峻別しているためではないかと推察される。どんな地域でも、お互いさまの精神でふれあい・助け合いを求める人々はいるはずであり、そういう人々の気持ちを掘り起こせば、最低賃金以下の標準額、あるいは時間通貨・ふれあい切符によるふれあい活動をする人が必ず現れると考える。
(四)最低賃金を超える謝礼金の標準額を設定している団体にあっては、会員に対し、改めて右(一)の考え方を浸透させ、右(二)の運用を行って、理解を深め、謝礼金の標準額をどう設定するかに向けての議論を進めてほしい。
  また、会員の感覚が固まっていて、標準額を引き下げることが困難な場合には、その活動のほかに、居場所や時間通貨など、無償または最低賃金以下の謝礼金を設定したふれあい活動を行い、既存の会員をこれにも参加するよう誘導して、ふれあい・助け合いの活動が原点だと確認できるようにリードしてほしい。
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  ふれあい活動のリーダーはもちろん、関係するみんなで、しっかりふれあいの喜びを実感できる活動を創り出していきたいと願っている。

(『さぁ、言おう』2009年6月号)

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 [日付は更新日]
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2009年4月9日 ひとり生活応援プラン
2009年3月9日 いきいきと存続する組織
2009年2月9日 ネットワークのつくり方
2009年1月9日 介護現場の混乱と私たちの進む方向
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