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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2014年5月12日

新地域支援事業の推進戦略

「みんな明るく前向きで、いい雰囲気じゃないですか」
 4月14日、全国13ブロックのリーダーが集まって新地域支援事業の戦略を協議した。これを終始聞いていた和久井良一理事の感想である。去る2月18日から3日間、全インストラクターが集まって開いた全国戦略会議で、新地域支援事業普及のためのフォーラムを全国13ブロックで開くことを決めた。新地域支援事業というのは、要支援者に対する生活支援を地域の助け合いで引き受けるため、全国市町村に仕掛け人を設けて助け合い活動を一挙に広げる事業のことである。
 各地のインストラクターが頑張って、この6月までに北海道から沖縄まで20の地域でフォーラムを開くことになった。すべてのフォーラムに、厚生労働省老健局の朝川知昭振興課長ら政策担当官が出席してくれる態勢になっている。
 4月14日に協議したのは、フォーラム開催後、私たちはどのようにして県や市町村のやる気を高め、具体化していくかについての戦略である。
 まず、各インストラクターは、自分が働きかける対象領域を、@県レベルA市町村レベルB地域包括支援センター担当区域レベルのいずれかを選ぶ。当財団としては、県レベルを選ぶインストラクターが多いことを望んでいる。
 県レベルを選んだインストラクターは、県の担当官と話し合い、県が行う管内市町村の仕掛け人に対する研修や、市町村の新地域支援事業に関する指導に参画する。県レベルのインストラクターは併せて、自己の活動する市町村に対する働きかけを担当することが望ましい。
 市町村レベルを選んだインストラクターは、働きかける市町村を選び、その市町村の行う新地域支援事業に協力する。市町村が選ぶ仕掛け人に自ら立候補するのもよいし、忙しくて専従が無理な人は、自らの事業を行いつつ、選ばれた仕掛け人に可能な限り協力して、新しい助け合い活動を掘り起こしたり、すでにあるいろいろな助け合い(居場所・家事援助・外出支援・配食など)のネットワークをつくってほしい。少なくとも自分が住む市町村は担当してほしいが、複数担当してくれることを歓迎する。
 地域包括支援センター区域担当は、自分が活動する地域において、同じように仕掛け人に協力して、助け合いを広げていく。
 どのレベルで働きかけるにせよ、インストラクター単独では難しく、社会福祉協議会や地縁組織、NPO、その他の団体のリーダーたちと協力し、チームをつくり、気持ちを合わせて動く必要がある。チームは、やがて結成される協議体の母体となるであろう。協議体は、地域の助け合い活動を行う団体のネットワークで、連携したサービス提供を生み出すと共に、仕掛け人を補助して、足りないサービスをつくり出していくことになる。
 それぞれに個性の強い助け合い団体が協力し合うには、目指す地域社会像を共有することが必要である。
 さわやか福祉財団が提言している「目指す地域社会像」は、次のとおりである。

目指す地域社会像

 目指す地域社会像の理念は、地域の住民が安心して心豊かに暮らせる社会である。
 この理念を実現するために、その地域では日常的にご近所どうしの交流が行われているほか、地域の絆を深めるため、誰もが気軽に立ち寄り交流できる居場所(人の集まる場所)が設けられている。
 また、地縁組織が、見守りや交流(居場所、イベントなど)、ご近所どうしで行う日常生活上の助け合い、地域の景観保持や健康体操など、住民の地域活動を誘導している。市区町村や社会福祉協議会などは、地縁組織の活動を支援している。
 さらに、福祉や助け合い、子育て支援、権利擁護や町づくりなどの分野で活躍するNPOその他の非営利団体、それに企業の社会貢献活動部門などは、地縁組織と連携して、地縁組織では満たせない助け合いのニーズを満たす活動を行う。たとえばコミュニティカフェなど継続的な交流場所の運営、同一人物に対する継続的な家事援助、移動、配食などのサービスの提供、子どもや高齢者などを継続して預かる場所などは、NPOその他テーマ型の活動団体が行っている。
 その地域では、地縁組織の全テーマ型の助け合いと、NPOその他の団体のテーマ型の助け合いとが連携して提供されているために、住民は医療、介護の在宅サービスの充実と相まって、幼児から人生の最終時期を地域で暮らす高齢者まで、安心して心豊かに暮らすことができる。要支援者に対する生活支援は助け合い活動で行われているほか、地域による子育て支援や生活困窮者の支援も助け合い活動が担う部分が大きい。また、認知症者等の後見を行う市民後見NPOも、助け合いのネットワークに加わっている。当然のことながら、その地域の助け合い活動には、勤労者や学生も地域人として参加している。
 助け合い活動の普及や活動者の養成、活動団体の基盤整備は、必要とされる範囲で行政が資金を負担している。
 助け合い活動の運営に必要な資金は事業収入のほか、寄付にて賄われている。寄付を募るための基金の創設、運営には、市区町村が協力している。

(『さぁ、言おう』2014年5月号)

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 [日付は更新日]
2014年 4月10日 原点に戻る
2014年 3月12日 新しいステージ
2014年 2月11日 新地域支援事業とインストラクター
2014年 1月11日 新しい一歩
2013年12月11日 新地域支援制度の設計
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