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定期連載
更新日:2010年7月26日

拝啓 菅総理大臣殿

 拝啓 菅総理大臣殿
 市民運動の現場にいる立場から、エールを送ります。
 しっかり腰を据えて下さい。
 頭を上げて、日本丸の進むべき航路を、確認して下さい。
 舵を取る進路に確信が持てたら、身体の中からやる気が湧き上がってくる筈です。
 舳先(へさき)に足を踏ん張って立ち、日本の最大幸福のために、真っ直ぐ進んで下さい。
 確信した日本の進路を掲げて仮に代表選で敗れても、それであっぱれではないですか。捲土重来(けんどちょうらい)を期せばよいのです。
 市民は、あなたの消費税論議の軽さにがっかりしましたが、まだ多くは、あなたの続投を望んでいます。それは、市民運動出身のあなたが、今回の失敗に懲りて、あなたらしさを取り戻し、しっかりリードしてくれることに望みを持っているからです。
                    *          *
 市民が期待するあなたらしさとは、自分の利益や権限よりも、市民の幸福実現を優先するいさぎよさとひたむきさです。
 小沢さんと組んだり、亀井さんを立てたりする姿は、見たくもありません。政治はきれいごとでやれないことは判っていますが、妥協するのは、あなたが日本の市民のために立てた目的を実現するために、止むを得ないことがはっきりしている場合に限ります。旗印も掲げず地位や権力を保持するための野合をすれば、市民は永遠にあなたを見捨てるでしょう。
 逆にあなたが旗印を掲げて真っ直ぐ進んだら、たとえつまずいても、市民はいっそうあなたを支持するでしょう。
 市民の心を掴む旗印と、市民の立場に徹してそれを実現する戦略が必要です。
 「強い経済、強い財政、強い社会保障」の前に、民主党躍進の旗印「コンクリートから人へ」はどうなったのですか。何よりも人を大切にするという基本姿勢は、新鮮で、時代に合っています。
 その上での経済、財政、社会保障ですが、市民は「強さ」より「確実さ」を求めています。行く先が見えず、不安だからです。
 人を大切にするなら、確実な社会保障の航図を示すことが、まず必要でしょう。野党に協議を求めるあなたの姿勢は共感を呼びます。野党が応じないなら、人口変動の先を見通した負担と給付の選択肢を示したらいかがでしょう。市民は喜んで議論に参加し、あなたが先を見据えた上で目先の航路を選ぶのに協力するでしょう。
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 確かな財政は、社会保障の安心のために必要です。市民の多くは、消費税の増税を、覚悟しています。
 しかし、辛(つら)い。どうしてもやらなければいけないなら、社会保障の安心のため止むを得ないことが明白になり、弱者保護のあり方も徹底的に詰めた上でのことです。その詰める作業を、顔を上げて、市民の理解を得ながら、しっかり進めてほしいのです。
 経済も、あなたらしい方向で、強いものにしてほしいと願っています。モノの経済は、発展途上国に幸せをもたらす国際戦略によって強くしてほしい。また、ヒトを対象とする経済は、社会保障の給付に上乗せして高齢者が貯めているお金を使うことによって強いものになるよう導いて下さい。
 多くの市民が期待しています。

 
(信濃毎日新聞「月曜評論」2010年7月26日掲載)
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