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更新日:2013年1月10日
札幌の地域ケアネット
 430名の若者らが、思い思いにバンザイをしたりしながら、カメラに向かって全員ほほえんでいる。
 「連絡会の連絡会」が毎年開催する新年交流会の写真からは、ムンムンと熱気が伝わってくる。
 彼らは、札幌で医療や福祉の仕事を行っているプロの集団。ここまで地域ネットワークを広げたもとの連絡会は、(札幌市)西区在宅ケア連絡会。これをスタートさせたのは、1997年で、中心人物は、西区で坂本医院を営む坂本仁医師。
 坂本さんは介護保険制度が導入される前から、患者を治療するには、まず「生活者」として配慮することが必要だと考えた。だから、医師が患者を治療するには、医療のサービスが、生活を支える介護のサービスと連携して提供されなければならない。当時としては非常に進んだ考え方である。
 坂本さんは信念に基づいて西区在宅ケア連絡会をスタートさせ、月1回の勉強会には、関係者は誰でも参加できることとした。
 すると、医師、看護師、保健師はもちろん、介護関係職員、行政職員、ソーシャルワーカー、リハビリ関係者、薬剤師、栄養士など志を持つプロが続々と参加し始めた。結構若い人が多い。医療に疑問を持つ一般住民も参加した。
 以後、着々と重ねた勉強会がなんと165回。いろいろな立場から在宅医療の充実などについて毎回真剣な議論が行われ、「ぐるぐる図」というネットワーク図もつくられた。急性期の医療から在宅医療まで、さまざまな機関がネットワークを組み、患者は生活者としてその時々にもっとも適切なケアを受けられるよう、ぐるぐると移っていくという図である。
 患者の生活を中核に置き、どの職種の人ともつながり、その知恵を引き出し、みんなが対等の立場で議論する。坂本さんを慕って、若いプロが集まってくるのは当然であろう。
 在宅ケア連絡会は西区以外にも広がり、札幌にはあたたかいネットがはりめぐらされている。
(京都新聞「暖流」2012年12月23日掲載)
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2012年12月12日 生活保護と尊厳
2012年 9月20日 一緒にいる福祉
2012年 7月25日 一緒に暮らす
2012年 5月17日 アウトリーチ
2012年 3月15日 ケアマネは不要か
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